朔也はあらためて瑠哀の計り知れない力に驚嘆していたのだった。


「あの………?」


 刑事の一人が困ったように朔也に声をかけた。


 朔也は刑事達に向き直り、今聞いたこの事実を簡潔に話し出した。


 刑事達は少し驚きの表情を見せ、話を聞きながら瑠哀を見返した。


「―――今すぐ、リチャードを押さえてください。

大学側から通告を受けている奴が、ケインを見逃すはずはありません。

どんなことをしてでも、この件をなかったものとしてくるはずです。

この屋敷も見張りを立て、厳重な警戒体勢を敷いてください。

奴は、必ず仕掛けてきます」


 一人の刑事が隣の刑事を目線で促し、その男がダッと部屋から走り出して行く。


「お嬢さん、この他になにか隠していることはありませんね」

『ありません。

ただ―――。刑事さん、ケインは、この屋敷のことなら端から端まで知っている、と言っていました。

だから、忍び込んだ、と。

でも、本当にそうでしょうか。

これだけの警備の中、誰にも見つからず、この部屋に侵入してきた。

窓をつたって、バルコニーに飛び降りたそうです。

ここは、かなり表側に近い。警備がケインを見逃すはずはありません。

それなら、どうやってケインはここに侵入できたのでしょう。

必ず、屋敷内にケインを手引きした者がいます。

その人物が、警備の手薄になる今の時間をケインに知らせたはずです。

ケインの手の者が、必ず、この屋敷内にいます。

もしかしたら、リチャードも同様に』