『リチャードの奨学金を切ったの。

上から圧力をかけて、品行方正な彼の悪行を暴露したのよ。

謹慎中と称して、彼の素行再調査を勧告したわ。

もし、一つでも黒い部分が浮き出たら、彼は即刻退学。

ほんの些細な噂一つでも、退学。

その知らせが、今日、あの男に言い渡された。

いつまでも偉そうに舞台の後ろに隠れてケインを操作し、

自分には全く火の粉がかからないでいられると思ったら、大間違いよ。

自分に余裕があるから、怖いものなんかないのよ。

だから、それを全部切ってやったわ。

なにも貰えなくなったあいつが、ケインが失敗したらから次を狙う、などとほざけるのかしらね。

今までエリートコースを一直線に上がってきた、あいつの初めての汚点と挫折だわ。

これで、あいつを同じ土俵に引きずり出した。

必ず、あいつが来る』


 今まで隠されていたその事実を聞いて、朔也は驚愕していた。

 これが、瑠哀がマーグリスにさせたこと。

 こんなことまで考えていたなんて、全く考えにも及ばなかった。



 たった十六の女の子なのに、あの狂ったケインだけでなく、リチャードまでも相手にしていたのだ。

 大の大人でさえ、ここまで完璧に罠を仕掛けて追い詰めることができるだろうか。


 ケインを読んで、そして、リチャードを読んで、全ての状況を照らし合わせて、この結果に持ち込んで行った。


 並の鋭さじゃない。


 本気で相手をする――とは、これを言っていたのだろう。