微かに口端だけを上げて皮肉的な響きもしないではない口調で話すリチャードは、余裕しゃくしゃくだ。


 他人よりも一歩上に、前にいるという自負からか、瑠哀と真正面から向き合っているのに、その瑠哀さえも相手にしていない、と言う冷たい態度がリチャードの性格を物語っていた。


 見下しているのは、誰に勝るとも劣らないその頭脳がリチャードの最大の武器であり、それをリチャード自身が一番に理解しているからなのだ。



 だが、そのリチャードを見返している瑠哀も、怯んだ様子はなかった。


 あからさまに、無知な奴だ、とでも言いたげなリチャードの冷たい軽蔑を受けながらも、瑠哀の口元に薄っすらとした笑みが上がった。


 まるで、瑠哀を見下しているリチャード自身が滑稽であるかのような、そんな色を浮べ、ふっと、瑠哀が浅く笑った。



「そうそう、自分の思い通りに行くといいけど。

すり替えは簡単かもしれないけど、誤算は誤算よ。

裏で操作するなら、そこら辺の誤算もきちんと計算しておくべきだったわね。

過大な自惚れは足元を見る、ってね」

「さあ、どうだか」



 リチャードは瑠哀の示唆していることなど全く気にも留めていない。

 全く、気付きもしない。



「話はそれだけかな。

ここで余計な時間を取られてしまったんで、もう帰りたいんだが?」

「勝手に帰れば。

引き留めた覚えはないわ。

勝手に寄って来たんでしょう」


 瑠哀もツラッとしてそれを言った。