「やっぱり、君ならできると思っていた」

「ご苦労だったね」


 瑠哀がマーグリスの部屋から出ると、朔也とピエールが優しい微笑みを浮かべて待っていた。


 ピエールは瑠哀の肩を引き寄せ、その額にキスをする。


「これで、彼は大丈夫だな。

今の彼なら、ユージンを任せることができる」

「そうね。

彼なら大丈夫だわ。良かった、彼が変わってくれて―――。

残るは、あと一つね………」


 と言ったまま、瑠哀の表情がだんだんと無くなっていき、その瞳の先がどこか見えない場所を睨み出した。


 朔也はその瑠哀の様子に気付いて、下から覗くようにして声をかけた。


「ルイ?」



 瑠哀はただ目線だけを上げ朔也を見る。

 すぐに下を向き、なにかに没頭していくようにその瞳の色がなくなっていく。



 朔也はピエールと一瞬目線を交わし、ルイ、とその肩に触れた。


「―――二人とも、私が行き過ぎても止めないでね」


 瑠哀は不思議な微笑をうっすらとその口に浮かべていた。