部屋に戻って来ると、ユージンは泣き疲れて、瑠哀の腕の中で眠っていた。

 かすれた声で嗚咽を繰り返しながら、まだその体が揺れていた。



 瑠哀はゆっくりとユージンを抱き上げ、立ち上がった。


「マーグリス氏は大丈夫?」

「ああ。骨には届いていないようだ。

動脈も外しているようだし。

ただ、玉が肉に挟まっているから、摘出手術をしなくてはならないが、

今の所は大丈夫だと思う」

「そう。―――セシルは?」


 瑠哀はピエールに向く。


「ショックで自失してるよ。

医者が来たら、鎮静剤を打って、眠らせるしかないだろうね」


 瑠哀は小さく溜め息をついて、ずり下がるユージンをもう一度抱き上げた。


「ユージンを寝かせてくるわ。

途中で目を覚ますといけないから、私も付き添うわ。

後を、お願いできる?」

「ああ、大丈夫だ。

ピエールも、医者が来次第空くから、君のところに行かせるよ」



 瑠哀は頷いて、静かに歩き出した。

 メイドの一人が駆けてきて、そのドアを開ける。



 軽く礼を言って、そのままドアを通り過ぎて部屋を後にした。