「綺麗」
眺めた先に見える海。
「加藤、海好きだな」
夕暮れ時。
オレンジから黒に変わる瞬間に
加藤と二人で居られる。
「昔の街はね、ほら、山奥だったから
海とか全然馴染みなくて。」
観覧車が上がっていくのと比例して
緊張で胸が鳴りだす。
言おう。
加藤の笑顔がほんの少し
薄くなった今。
言ってしまおう。
「加藤、俺さ」
「待って、会長」
見つめた先に居る加藤は
目に涙をためている。
なんで泣いてるの。
俺のせい?
だとしたら、ごめん。
だけどさ、
もし、俺の存在が君の気持ちを少しでも揺らすのなら。
ほんの少しそれが嬉しいんだ。
「会長、言わないで」
「加藤のこと」
「会長」
「好き、なんだ」


