君が好き





「…へ?」


首を傾げた後、
こちらの視線の先を見て加藤は困ったように笑った。




「こっちに、行きたい」



揺れた笑顔。
彼女が指さしたのは
昔の街とは反対にある、海の街。


「うん。
じゃあ行こうか。」


笑って言っても
加藤の笑顔はまだ硬いまま。


笑顔を奪った自分の言葉。
それが憎くて。

加藤が、好きで。

気付かないうちに
大きく膨らんだ気持ちは
好き、なんて陳腐な言葉じゃ言い表せないほどなんだけど。


なんていえば
伝わるだろう。


こんなにも、
君に笑っていてほしいと。



「加藤、こっち」


初めて会ったときのように
一緒に電車に乗って。

だけど、違うのは。


「はい」


二人の距離感で。

それは、初めて会った時よりも
近くなったようにも
遠くなったようにも感じる。



加藤、
少しでも俺は
君に入り込めているかな。