君が好き






「デート、して」



笑いながら言ってみれば
加藤の顔はさらに固くなる。


分かってる。

困らせてる。



だけど。
最後の思い出が欲しい。





「加藤。」



最近は
こっちも加藤にどう接していいのかわかんなくて
ぎこちなくなっていたと思う。

好きだと思えば、思うほど
彼女は離れていくような気がしたから。



だけどどうせ離れてしまうなら
伝えてからにしたいんだ。



こんなに君が好きだって。
伝えておきたい。


「行こう」


「あ、待って」


掴んだその手。
振り払われたことにほんの少し胸は痛む。


やっぱり。
迷惑、だよな。


なんでこんなに傷ついてんだよ。
分かってただろ、
最近の加藤を見てれば。





「あの、」


か細い声に
息をのむ。


何を言われても、
笑っていよう。

そっか、ありがとうって。







「カバン、取ってきます」