君が好き





「わー!すごーい!」

千田の歓喜の声に相応しいぐらい、
そこはちゃんとした祭、だった。

結局、他の役員は祭にそんなに乗り気でなく、加藤と千田、山田の四人で行くことになってしまった。

加藤が行かない、なんて言い出さないかとヒヤヒヤしたが
結局、事は乱れることなく淡々と進んでいる。


「寂れた商店街の割りにはがんばってんな」
「ははは、山田先輩…」


感心の声を、なんとも失礼な言葉であげた山田に加藤は苦笑いを見せる。


「すげぇ…」


昨日加藤と作った広場は綺麗に彩られて
ほんの少し昨日のことが蘇った。



加藤は今…

静かに向けた視線、
それがこっちにも向かっていたことを知るとたちまち胸が痺れる。


加藤、楽しい?
この街も、ちゃんと楽しめてるかな?


伝えたい気持ちは
困ったように揺れる笑顔に遮られてしまう。



「ねぇ、かいちょ!あれ!あれしたい!」

「ん?」

気を取り直して見たその指の先。
指差す先には金魚すくいが。

「お!いーな!やろうぜ!みんなで勝負しよう!」

「はい」

ニコッと笑った加藤に仕方なく俺も走る千田の後をおった。



本当は、苦手なんだよ、金魚すくい…。



不器用なのかすぐにあの紙の部分が破れてしまう。


「おじちゃーん!四人」


だけどまぁ。


「わぁ、いっぱいいるー」
「ねー」


加藤が楽しそうだから、それでいいや。





「はい、破れるまでね、がんばってー」