「あの」
お腹に回った手に力が入る。
それが可愛くて
愛しくて。
「聞いてもらってもいいですか、」
「新曲でも発売するの?」
「…ふざけないで、聞いて」
笑ってしまえば背中に頭突きを受けた。
ほら、この瞬間にも好きが溢れる。
と、そんな幸せに浸っていれば
「あ、」
「ん?どした?」
離れてしまった加藤の身体。
どうしたのかと振り向けば
どうやら電車が到着したらしい。
駅からゾロゾロと人がでてきている。
「…どっか行くか」
「はい」
加藤の頬が赤いのは
化粧なのか、この寒さのせいなのか
…それとも、俺のせいなのか。
ダメ男な俺にはわからないけど。
でも、そんな加藤が可愛くて仕方ないっていう気持ちは
きっと誰よりも持ってる。
「あの、あんまり静かなとこは、嫌です」
「ん、了解」


