「なあんだ、もう戻ってたのか。」

溜め息混じりにそう言う萌はどこかつまらなそうで。

「まあ、また放課後にも会えるでしょ、」

そう言うと萌はそれもそうだ、と頷いた。

ーーーーーーーーーん?

あの花、、、、、
さっき巴衛くんが立っていた所に私の大好きな花が一輪だけ落ちていたのだ。

あれ、こんなことどこかで体験したような?
うーん、と首を捻る私を見て美里が「巴衛くんも洒落たことしてくれるねえ」と可笑しそうに笑った。

その隣では萌が「そうだね、でも懐かしい。」と優しく微笑んでいる。

懐かしいーーーー?
まあいいや。それよりもーー

「何でこの花がこんなとこに?」

「ほら、巴衛くんちって有名な華道家だったじゃない。」

私の問いにこう応えた美里。
それは知ってるけどーー、

「違うよ、南はどうしてここに置いてあるかって聞いてんじゃない?、、、多分。」

自信なさげにそう言った萌に頷く。
だって可笑しいじゃん。

こんなとこに私の大好きな勿忘草が落ちているんだものーーーーー。

そういえばこの花を好きになったのってなんでだっけ?

疑問がいっぱいで頭がパンクしそう。
私は嘲笑するように笑えば、「そろそろ授業に戻んないと内申下げられちゃうよー?」

と2人に笑いかけるがこんな事で授業に戻るような良い子じゃないことを知っている私は「次の授業って2年と合同じゃなかったけー?」と呟くように言ってみる。

ーーーーー「「行く!!今すぐ行きます!」」

暫しの沈黙を置いて2人は息ぴったりに声を合わせてそう言った。

「はいはい、じゃあ早く戻んないとね、?」

「はーいっ、」

元気に返事をする萌に楽しそうに笑っている美里。そして2人の後に次いで屋上を出ようとした私の髪を撫でるように優しい風が吹いていった。

私の手にはまださっきの大好きな花が握られたままで。