「えー、伊奈ちゃん帰っちゃうのー?この時間、いつもなら色々話してるじゃーん」
えっ、なに言ってるの?
…なんかむかつくな。このマスター。
「…ま、今日はね。仕方ないよねぇ。そうだ、お土産作ったわよ。持って帰って?」
「あっ、すいません。」
ヒロさんが作ってくれたのは、
あとは焼くだけに仕込まれたフレンチトーストだった。
可愛い色合いのタッパーに入ってた。
「ヒロさん…っ!」
「タッパー、返しに来てね?」
タッパーはまた来るきっかけってことか。
やっぱり気遣い屋だなぁ。
「…分かりました。じゃあ、また。」
店から出た瞬間、松橋が追いかけてきた。
「伊奈ちゃん!」
……店から出た瞬間に、クールさは失われるんだね。



