「う〜ん…。
何か、全然楽しそうじゃないから
聞いててつまんない。
お話決めたじゃん
自分が主人公になりきった気分で
吹いた方がいくない?」
演奏し終わって
指揮をふっていた先輩が言った。
「ちょっと待ってー!
ホルンずっと裏打ちだよ!?
メロディひとつもないんだよ?
なりきっても…って感じだよ」
「ベースも!!」
ホルンの先輩と、
低音の先輩が非難した。
「しょーがない。
気分だけでも盛り上がって」
「何だよー!
自分クラリネットで
ほとんどメロディーだからって!
バカにしてんのか—!」
「あはは!!」
言い合いを始める先輩たち。
「トランペットが全然楽しそうじゃないよ。
ペットは目立つとこたくさんあるじゃん?
もっとノッたらいい感じ。
彩未みてみな?
やぱいよ、彩は動き過ぎってぐらい。
楽器飛んでいっちゃいそう」
「彩未はやばい!」
「彩自体も
飛んでっちゃうんじゃない」
「宇宙まで飛んでけ!宇宙に!」
「うるさいっっ」
彩未先輩はトランペットの
パートリーダーをしてる先輩。
すごく楽器がうまくて
すごく尊敬する先輩。
3年生には、彩って呼ばれてる。
曲を吹くときの感情移入の仕方が
半端じゃない。
