「ん?」


「…あの、さっき…
階段で、転んだとき…


…ありがと…」



照れくさくて、目を合わせられない。
少しうつむいて、小さな声で言った。



唐沢くんは、何も言わずに
にこっと笑って、部活に戻っていった。



初めて目が合って、
初めて話したあの日と同じ笑顔。



胸に焼き付いて、
しばらく頭の中に残る。




「優奈ー」



「あ、はーい」



「今唐沢のこと
かっこいいとか思ったでしょー」



「思ってないっ」



「嘘つけー」




…嘘です。



思いました。



だってかっこいいんだもん。



目が離れなかった。


…離れてくれなかった。