唐沢くんが持っていたのは、
薄っぺらい美術の教科書。
唐沢くんは、
美術の教科書を一旦机の上に置いて、
私の持っている国語の教科書を取った。
「それ運びなよ」
「え、ありがとう…
でも、何で?」
「や…重そうだったから…」
唐沢くんは、
私の苦戦した国語の教科書を軽々持ち上げて
さっさと教室に戻ってしまった。
桃香ちゃんの数学の教科書だって
私のと同じぐらい
重そうだったのに。
何で私?
やっぱり私チビだから
重そうに見えたのかな?
「優しいね〜!
ラッキーじゃん、優奈ちゃん。
いいなぁいいなぁ〜!」
「あ、何かごめん…」
「え?
そんなんいいのいいの〜!」
「ぎゃはははっ」
軽い教科書持って
バカ騒ぎしてる男子たち。
この男子たちに比べて、唐沢くんて…
大人で優しいなぁ…
