怪我も病気もしてないのに、病院へ?

お父さんは近くにあったリモコンでテレビの電源を切ると、ゆっくり立ちか上がった。

騒がしかった部屋は、一瞬で静かになる。


「お父さんの知り合いの先生に相談したら、一度診察に来たらどうだって言われてな・・・」

「だから、なんでだよ・・・!?」


黙ったままの二人を、ギロリと睨みつける。

一分一秒だって、勿体ないのに・・・。

病院に行く時間があれば、私は七海を捜しに遠くに行きたい。


「・・・問題があるのは、心の方よ・・・」


私の肩を優しく引き寄せ、お母さんは今にも泣きそうな声で子供をあやすように言い聞かせる。

・・・心。

それは・・・裕也が言った通り、私が現実を受け止め切れてないって事?

七海が死んだと認めろって事か?


「もう、泉の体に傷が付くのを見たくないのよ・・・」


何度も流した涙は、全て七海に捧げる物だった。

・・・七海。

七海、七海・・・。


「・・・・・・違うっ!七海は・・・七海は生きてる・・・!私が、迎えに行ってあげなきゃ・・・」


七海の笑顔は、私の中に鮮明に焼き付いたままだ―・・・。