真っ黒な髪は、艶やかな光りを放ち。

茶色い瞳の中には、凄い剣幕で睨む私の姿が映っていた。


「・・・痛いか?赤くなってるぞ・・・」


切れた唇からは、赤い液体が流れる。

それを手で拭い、私は目の前に差し出された手を無視して立ち上がった。


「おい、泉!」

「煩い・・・。ほっとけ」


朝から降り続く弱い雨は夜になっても止む気配はなくて、私の上に落ちてきた。

毎日、私は外に出る。

雨でも、風でも、雪でも・・・。

台風が来てたって、捜しに行く。


「泉、もう暗いから帰るぞ」

「だから、ほっとけってば」

「怪我してる女をほって置けるわけないだろーが!」


前に進もうとする私の手を握り、私を睨むように見つめてくる。

・・・雨は冷たいのに、コイツの手は温かい・・・。

・・・生きてるんだ。

コイツも、私も・・・。


「帰ろう・・・。風邪ひくから・・・」


握った手を、私が進もうとする反対の方向へと引っ張る。

消えてしまえばいいのに―・・・。

私も。

この、世界も・・・。