しばらくして、
翔のお母さんも駆けつけ、医師の話を聞いた。


「もう、潮時かもしれません。」

医師から告げられたのは
その一言。

「潮時ですか???」




「次、翔くんが目覚めたら。
 ほぼ確実に記憶が戻っているでしょう。」

「え…」

「おそらく、翔くんは
 もともと、記憶なんか失わなかった


 …はず、なんです。
 なんらかによる
 莫大な精神的ショックと疲労で
 記憶が歪んでしまったのです。
 今回の場合、精神的ショックは、
 大切な方を亡くしてしまったから。
 疲労は頼れる人がいなくて
 そして、あなたにも会えなかったからですよ、桃花さん。」

「じゃぁ、メールでもくれたら
 良かったじゃない…
 …っぅぅ」

「安らげる場所を見つけたんじゃない?
 一ノ瀬くんは。
 だから、思い出したんだよ。
 私はそうだと思うな。
 一ノ瀬くんのためにも信じて待とう?」

華月が言ったことを信じていよう。
翔を信じていよう。