22歳のある日。
特別なことがあった訳ではない。
仕事が終わって、家の帰り道。
風が冷たくて、一気に体温が下がる気がした。
ふた空を見上げると、月が出ていた。
下弦の月。
「これから、欠けていく月だな。」

無意識にでた独り言に、歩く足が止まり、動けなくなった。
冷たくなった頬に、暖かい涙がさらさらとつたっていく。

年がたつたびに、どんどん何か、見えない何かが失われていく気がしている。

「私の価値ってどれくらい?」

もやもやと抱えていた気持ちが、明確になった瞬間だった。

「私って、価値があるの?」

また、出てくる問いに、私は黙るしかなかった。
答えられるものがない。
それが、あの時の私の答えだったから。