最後の雨

「可代?」


恭介が隣から不意に私を呼んだ。


私は海から目を話して恭介の方を見た。


恭介は頭をかいて少し考えてからため息をついて言った。


「今日、ずっとぼーっとしてる。晴れの日ならともかく今日は雨なのに…」



すねているというよりも心配そうな恭介を見ているとこっちが笑顔になってくる。



「大丈夫だよ。ただね、なんか夢見たの。多分あれは男の子だったかもしれないなあ…。優しそうな感じだったなあ」


少しだけふざけてでもほとんど本当の事をいってみた。


すると思ったとうりの反応が帰って来た。


「可代、男って俺じゃないよね……」



「かもねー」

「可代…」

「うん?」

「可代」

「なに?」




窓から海を見ながら笑いを堪えていた私を何回も恭介が呼ぶから、振り向いてみると恭介の顔がすごく近くにあった。



そのまま恭介は私にキスをした。


不意をつかれて赤くなる私にいつもの笑顔の恭介は勝ち誇った顔になる。




「可代」

「はい…」

恥ずかしくて私は下を向いていた。

「その男の子がどうしたの?」

いじわるな口調の恭介をにらんで私はまた窓の外を見た。


「可代」

「だからあ、呼びすぎだって!!」

「いっぱい呼びたいんだ」
「はい?」


「可代って呼ぶだけで幸せだなぁっておもったりするんだ…。これはほんと」



真面目な顔で恭介は私に言った。


私は海を見るのをやめて、恭介を見た。