最後の雨

「可代。起きて」


優しい恭介の声に起こされた。


いつの間にか景色は殺風景な都会のビルから、一面に広がる海に変わっていた。


今見ていた夢はこの綺麗な海によって頭から掻き消されていた。



「綺麗・・」



澄み切った完全なブルーなんかじゃないけれど、私はとても綺麗だと思った。



まだ6月という夏の一歩手前のこの時期に、砂浜にはやはり人はいなかった。



ただ雨が曇り空の下、海に次々と潜り込んでいるような、そんな物悲しい風景。

でも恭介は私を連れて来てくれた。

私が大好きな物をちゃんと知っているから。