最後の雨

どうしても私は

いなくなってしまった後を考えてしまう

そんなとき恭介はおこりもしないし、励ましもしない。

ただ苦笑いを浮かべるだけだった。


ごめんね…


強くならなきゃね





「恭介…」


その日はいやなほど、晴れの日で朝から私は具合が悪かった。




けど、私よりも恭介のほうがとても元気がなかった。



何度呼んでも返事がなくてでも私の手を握っている。



その手は震えていた。



とてもいやな予感が頭をよぎった。



うまくはいえないけれどうれしいことじゃない。




「恭介・・。おなかすいたなー。なんかたべたいなー」



相変わらず反応がない恭介。



私はため息をつくとベッドを降りようとした。



そのとき恭介がつないでいた手を強く握った。



「可代。来て」



そう言って立ち上がると、私がスリッパをはく前に私の手を引いて病室を出た。



こんな恭介は初めてでなにか怒っているのかなと思うほどだった。




「恭介!手痛い・・」



病院を出たとき恭介に言うとわれに帰ったように彼は立ち止まった。



「どうしたの?おかしいよ、恭介」


恭介は私を驚いた目で見た。


驚きたいのはこっちだよ!



「あ・・・。ごめん・・・」



そう言うと手を離した。



「何があったの・・?教えてよ」


恭介の顔をのぞき込むように聞いてみた。


恭介は苦しそうな目で私を見返した。


「可代。今から海行かない?」



唐突に言われてびっくりした。



「いいけど、今日は晴れだよ?」



「うん。ごめんね・・・」



そういっただけで恭介は車に乗り込んだ。


私も急いで反対側の助手席に乗り込んだ。



車はゆっくりと重苦しい動作で海へと発進した。