神龍と風の舞姫

「さあ、どうする?このまま息ができぬ苦しい死に方をするか?それとも取引に応じるか」

げほげほと咳き込むしるふにフードの下で歓喜に口元がゆがむ

「…だ、れが、あんたなんかと…!!」

かすれた様にしか出ない声を絞りだす

誰が、海斗を売るような真似をするものか

あの神龍は、この世界を自由に生きてこそ、美しく輝くというのに

あの輝きを汚すことは、忠誠者である自分が許さない

そう、世界でたった一人、自分にだけ与えられた称号

それをそう簡単には投げださない

海斗のそばにいると決めた時、それはいばらの道だとわかっていた

それでもあの手を取ったのだ

だから、たとえ、何があっても…

ーしるふ

「―っ」

凛とした声を、聴いたような気がした

海斗…

思わずその名を心の中でつぶやく

酸素が足りなくてふらつく足をなんとか踏ん張ってゆっくりと前を見据える

「教えてあげるわ、フード仮面さん」

その声は凛としていて、もはや揺らぐことを知らない

「たとえ、気配が感じられなくても、どこにいるかわからなくても、私の声は絶対に届く」

そう信じている

「それが、忠誠というものよ」

ふっと笑ったしるふの瞳が、ゆっくりと前を見据える