神龍と風の舞姫

「……っ…?」

そこまで考えて、海斗の気配がまったくたどれないことに気が付いた

どんなに離れてもどこに居ようとも感じ取れる気配がしない

これじゃ…

夢と同じじゃない

そのことに愕然とする

顔に出ただろうか、フードの下から愉快そうな笑い声が響く

「どうする?頼みの綱であるあの神龍と切り離されて」

見下すような口調に、キッと表情のわからないフードを睨み付ける

「…もう一度聞くわ。あなたは誰」

「ずっと、ずっと探していたのだよ。あの美しい神龍を」

答えになってないわよ

こいつ頭大丈夫かしら?と眉をひそめる

「風をまとう少女よ。取引をしようじゃないか」

「…取引…?」

「私は、あの神龍が欲しい。だが、私にその力はない。だから取引をしようじゃないか」

ぐっと押し黙ったしるふの瞳は明らかに警戒が見て取れる

「私はここから君を無事に出そう。そしたらあの神龍のもとに帰れる。君は命を救われるわけだ。その代り、私のもとにあの神龍と共に来い。そして従え」

「失礼だけど、その内容じゃあ釣り合いが取れないってものよ」

なんで一回命救われたくらいで一生従わなきゃいけないのよ

「それに、あなたが欲しいという神龍は関係ないじゃない」

「神龍の気配が感じ取れなくて不安じゃないのかね?」

揚げ足を取られるようですごく悔しい