神龍と風の舞姫

湖の周りは背の低い草に覆われている

緑と青のコントラストは絵画のようでとてもしっくりくる

「海斗ー」

朝露に濡れた草を踏みながら湖の周りを見回す

が、呼び出しておいてその姿はどこにもない

「慣れないことするからだよ」

一人文句を言いながら、ふと湖の奥に白い古めかしい建物があるのに気が付く

木々に隠れて角度が違ったら気が付かない

どうやら教会のようだ

まさかな

そう思いながら一応、と足を進める

キー、と高い音を立てながら開いたドアは、ずいぶん使われていないのだろうか

なかなかに埃臭い

「海斗くーん」

中に進みながらもう一度呼びかけるが、しるふの声が反響するだけで動く気配はない

「っとにもう、どこに行ったのよ」

もう宿に帰ろうかな、そう思って入ってきたドアの方を向くと

「…あれ?」

ドアが、ない…?

先ほどまで確実にそこに会ったドアが消えていた

ざっと胸に焦燥感が広がっていく

焦るな、そう心の中で繰り返すが、早鐘を打つ鼓動は一向に収まらない