神龍と風の舞姫

ついでにこちらから答えてやることも一切しない

街に出て人の話を聞いていると厄介なのは、こういう自分の出る幕を勘違いした輩に言い寄られたり、自分の力も大して理解していないのに喧嘩を吹っかけてくる輩だ

時間と体力の無駄でしかない

一瞥を投げかけて興味のなさそうに視線を外した海斗に、遊女のような恰好をした女は逆に面白そうにほほ笑みかける

「つれないのね、ねえ、今日うちの店に来ない?そしたら…っ」

腕に添えられた手を強く振り払うわけでもなく、すっと立ち上がって店外に出ていく

カランーと店のドアが虚しく鳴る

「ちょっと!!」

海斗を追いかけて店を出た女は、しかし、一瞬前に店を出たはずの海斗の姿が通りのどこにもなくてえ?とあたりを見回す

いくら探しても目立つバランスのとれた長身はどこにも見当たらなかった

「残念。いい男見つけたと思ったのに」

取り逃がしちゃったわ、と女は肩をすくめてすたすたと通りを歩いて行く

どうやら違うターゲットを見つけに行ったようだ




「相変わらず、もてるな、海斗」

くっくと喉の奥で面白そうな笑い声とともに背後から声がかかる

「黙っとけ、白眉」

姿は見えないが、気配で右後ろにいるのはわかるので、視線を投げかけながら海斗は言い放つ

「欲しかった情報は手に入ったのか」

続いて少し高めの声が左後ろから響く