神龍と風の舞姫

「いつまでそうしてるんだ」

星と少しの雲に隠れた月が輝く夜

しるふは、あの少女の墓の変わりを作って花を添え、静かに手をあわせたのち、ふらっと姿を消した

そうやって一人で森の中の川沿いや木の上に座り込んでいるときは、しるふが落ち込んでいるときなので海斗は少しの間放っておくことにしている

風の性質を持つためなのか、元来そういう性格なのか

しるふは感情移入しやすい

お人よし、それが海斗のしるふへの評価だ

そろそろ探しに行こうと腰を上げ、なんとなく森を進んでいると

川沿いの岩の上で膝を抱えているしるふを見つけた

背中から声をかけるとまるで海斗が来ることを予想していたように、少しだけ振り向いてきた

「…海斗と出会った時もこんな風に月がきれいだったよね」

ふと闇夜を見上げてしるふがつぶやく

確かに、しるふと出会った2年前もこんな夜だった

周りからの期待に満ちた、けれど恐怖している瞳に耐えかねて国を抜け出し、目的もなく進んでいた森の中で

月夜の中、その明かりに照らされて踊るしるふに出逢った

その時は一言二言交わしただけで、本当にしるふを知ったのは後日のことだった

もう2年も前のことになる