神龍と風の舞姫

今までその炎で焼き尽くされた人たちは、断末魔の悲鳴だけを残して消えている

絶対に逃げられない

それに魂が焼き尽くされるのはとてもつらいことだ

それを海斗は小さな女の子に向けている

「もう、手遅れだ。しるふ」

しるふの心を読んだのか、海斗が静かな瞳を向けてくる

「っ…!でも!!」

分かっている、本能が、魔力を持つ者の本能が、告げている

もう、あの子は手遅れだと

今、目の前にいる女の子は”本性”に食われようとしている

暴走した”本性”を止められずに自我を失おうとしている

それでも、まだあどけなさの残る少女だ

ぐっと唇をかんだしるふは、それまで下を向いていた女の子が、くすんだ感情のこもらない瞳を向けたことに気が付いて息をのんだ

あの瞳は、人ではない

「…っ」

どうして…

少女の操った水が渦となってたたきつけられる

それを風に乗ってかわしつつ、しるふは心に浮かぶ疑問に瞳を細めた