神龍と風の舞姫

「お前が神龍族の女に忠誠を誓ったと耳にしたが、本当か?海斗」

「ああ」

あの事件以来、感情をほとんど表に表さない海斗を面白そうに見つめ、龍は目を細める

「よほどいい女なのだろう。お前が選ぶほどなのだから」

「少し器がでかいだけだ。あと争いを望まない」

器とは、”本性”を受け入れる力のことだ

それぞれに器の大きさが異なり、忠誠を誓える相手が変わる

大は小を兼ねるというから、大きな器を持った者が力の少ない本性のものと忠誠を誓っても何も問題はないが、逆になると器からあふれ出した力は”本性”に襲い掛かり、暴走する

忠誠者ももろともあの世行きだろう

しるふはその器が大きく、神龍の海斗ですら受け入れることができる

きっと世界で10人いるかいないかの器の持ち主だ

「ふふふ、お前を受け入れるとは、物好きな女もいたものだ」

龍は、口を釣り上げ笑う

龍の言葉に、海斗はふと口元だけでわらう

「海斗、気をつけろ。何か大きな渦が回り始めている。とても強大な、渦が」

それまでの声音から急に厳かさが増す

部屋の空気が一気に張り詰める

「わかっているさ、避けられない歯車が動き出した、たぶん、もうだれにも止められない」

きっとまだ誰も気がついてはいないけれど、世界は大きくうねり、間違ったほうへと進み始めている

その先にあるのは、滅亡か、存亡か、

あるいは、破滅かもしれない

3者が均衡を保っているこの世界の