神龍と風の舞姫

「なんだい、明日行っちゃうのかい。寂しくなるねー」

宿に戻ったしるふは、明日宿を引き払うことをおかみさんに告げるために、一階の広間にいた

この町に入ってすぐ泊りはじめ、海斗がいなかった3か月温かい寝床を提供してくれた顔なじみのおかみさんは、しるふが居なくなることを本気でさびしがっているようだった

「連れも戻って来たし、山を越えたところで踊り子大会が開かれるから、見ておきたいなと思って」

本当は自分が出るのだけれど、どこから自分が風の舞姫だという情報が漏れるかわからないから不必要に大会に出るとか言えない

「ああ、あの子かい。青髪の男の子だろう、やっと戻ってきたのかい」

踊り子大会のことには少しも興味を示さず、おかみさんは、それはよかった、よかったと自分のことのように喜んでくれた

しるふはそんなおかみさんに笑顔を向けた