神龍と風の舞姫

「海斗!久しぶりね!!」

木の根を駆け下り、ふかふかの毛の中に顔をうずめる

本性に立ち戻った海斗は大きいから、身長170センチくらいのしるふでは、首元に飛びつくしかない

(久しぶりだな、しるふ)

頭の中にテレパシーのように、海斗の低い声が響く

決してほかの人には聞くことのできない忠誠の証

本性の声は、忠誠者にしか聞こえない、聞かせない

それが、忠誠をかわすということ

(怖くなんてないのにな…)

顔をうずめながら、そのぬくもりを感じつつ、しるふは思う

彼を見て恐怖を抱くものは数多い

恐怖のあまりに近寄ってこない、なんてことも多々ある

でも、しるふに言わせたらそれは外見だけで、毛はふかふかしていて暖かいし、まとう風も穏やかだ

外見だって白銀はきれいだし、瞳だって透き通っていてとてもきれいだ

おっきいなとは思うけど、怖いとは思わない

それはもしかしたら海斗自信を知っているからかもしれないけれど…


しばらく顔をうずめていたしるふは、ふと体を離し、海斗を見上げる

その視線に気が付いた海斗は、ふと一瞬にして人の姿に立ち戻った

きれいな澄んだ海を思わせる海斗の青い髪は、神龍国では珍しくない

龍は昔から海の神として讃えられてきた