神龍と風の舞姫

結局、粘りに粘って、粘り勝ちしたしるふは、半額以下になった食材を山のように抱え、宿への道を鼻歌交じりに歩いていた。

「ふんふふん」

大きな紙袋から覗く果物やパンはこれからの大切な食糧だ。いつ海斗が帰ってくるかわからない今、残りのお金で少しでも長く生活しなければならない。

(っていってもなー、さすがにちょっときついかも。そろそろ稼がないとなー。どっかで踊り子大会なんてやってないかしら)

二人の旅費の主な出所は、しるふが出場する踊り子大会が主でそのほかに人助けをした謝礼、よくわからないけれど海斗が時々持って帰ってくるまとまったお金である。

しるふは風の舞姫という愛称で呼ばれるちょっと有名な踊り子である。

大会に出ては優勝を飾り、人々に興奮と感動を届けている。

すごい煌びやかな衣装を着ているわけでもないし、凄腕の師匠についているわけでもないのにしるふの踊りは、たくさんの人を魅了する。

風のようにやってきて、穏やかで温かな風を吹かせたと思いきやまた風のようにいなくなる、そんな噂からいつしか風の舞姫と呼ばれるようになったのだ。

そんなしるふの本当の名を知る人はいない。

街を歩いていても気づくこともない。

それが風の舞姫

本性を知られるわけにはいかない。

神龍族の出で、風邪を操る力を持ち、なおかつ世界最強と言われる海斗・ディフレンドの忠誠者だなんて

知られるわけにはいかないのだ