神龍と風の舞姫

「ったくもう!!いっつもいっつも自分だけで済まそうとするんだから!!」

風に乗って宙に浮きながら進むしるふは、独り叫ぶ

その横に珍しく姿を現した九尾が音もなく並走する

地下に下りていくとそこには数名の護衛たちがいた

しるふと九尾の出現に反撃しようとしてくるが、

「邪魔ー!!!」

ぶわっと力任せに起こされた風に瞬時に切り刻まれる

地下に続く階段を下りきったところで、しるふはふわりと地に足をつける

その瞳は哀しげに歪んでいる

横に案じるように九尾が寄り添い、その温かな毛にそっと手を伸ばす

二人が見つめる先には、きっと国民と王宮の者たちだろう

何人もの遺体が並んでいたー




さらさらと心地よい風が吹き抜ける

時頼道端に咲いた小さな花が風に揺れている

けれど、優しい風とは対照的に周囲は沈んだ空気に満たされている

「巨人族の国が滅んだか」

しみじみとつぶやくのは、巨人族の国の隣に住まう森の神

海斗が地下にたどりつた時にしるふが墓を作りたいと言ったため、森の精霊や神々に力を請うたのだ