神龍と風の舞姫

ギーと低い音を立てて、背後のドアが開いた

ゆっくりと振り向くと

「やはり、お前たちだったか」

もはやあきらめすらも感じていないであろう無感動な瞳がこちらを見つめていた

広い室内の中心に立つ男性の周りで覆面をした護衛たちが、海斗の出現に一斉に攻撃態勢を作る

「-海斗。久しぶりじゃないか。まさかお前から会いに来てくれるとは」

手で護衛たちを制したその人は海斗の姿を認めて嬉しそうに手を広げる

その顔には深いしわが刻まれている

灰色がかった白髪が印象的だ

「性懲りもなく実験を続けていたのか」

「もちろんだ。我々の最終目的は忠誠者からの独立と解放。忠誠者との不平等な関係を一掃し、対等な世界を作るのが我々の宿願なのだから」

「巨人族はそのための犠牲か」

「犠牲などと呼ぶには惜しい。もっと尊ぶべき代償」

「国王はどうした」

淡々と問いかける海斗の声は抑揚に欠けている

「さあ?国王だろうが国民だろうが我々には関係ない。ただ情報が、その体に流れる遺伝子が欲しいだけ。誰だかなんて認識してはいない」

一瞬、海斗の瞳が少しだけ細められたような気がした