神龍と風の舞姫

「…っ!!!」

廊下の角を曲がった瞬間、視界に飛び込んできた光景に、しるふは無意識に海斗のマントを掴む

「出入りでもあったかね」

対照的に特に衝撃を受けたわけでもないように海斗がひょうひょうとつぶやきながら歩を進める

広い廊下の至る所に巨人族の兵士が横たわっている

見るからに絶命していることは確かだ

壁にはべっとりと血の流れた跡が残っている

「海斗…!」

死体に近づいて傷をまじまじと見つめる海斗にしるふのひきつった声が響く

「弾丸だな」

「弾丸?銃で撃たれたってこと?」

巨人族って頑丈なんじゃないの?

しるふの怯えた、けれど的確な問いかけに

「ああ、まず図体がでかいから弾丸そのものが致命傷を与えられるだけの威力を持ってないと対巨人に使用するなら意味がない」

すっと立ち上がって死体のころがる廊下を進む

きゅっと海斗のマントを握りしめてその背に隠れるようにしるふも後に続く

と、廊下の先にある大きな扉の前で海斗が立ち止まり、その横に倒れている巨人に視線を注ぐ

服装が先ほどまで倒れていた兵士たちより豪華なのが、血まみれでもわかる

「海斗?」