――紗姫視点――


紫月の気持ちを封じ込めた翌日。
いつもより、家が暗く感じた。





「………おはよう」





「………はよ」





「「………」」





沈黙が続く。
沈黙を破るために、私は口を開こうとした。





「そうだ、俺、緋里と付き合うことになったから。」





「………そう。私も朱翔と付き合うことになったわ。」





「………解った。じゃ、待ち合わせしてるから先に行く。」





紫月がそう言ったので、コクリと私は頷いた。





「行ってらっしゃい。」





「………行ってきます。」





紫月が玄関のドアを開けた瞬間。





「紗姫ちゃん、迎えに来た―――
って、まだ紫月居たの?」





何故か、朱翔が来た。





「居ちゃ悪いか?」





「いやぁ?別に、居ても気にしない。
じゃ、お邪魔します。」





スタスタと朱翔は家に入り、私の目の前に来た。





「………?朱翔どうし――」





私が口を開いた瞬間、朱翔がいきなりキスしてきた。





「………紫月には渡さない。」





「んっ…ふっ……しゅう、とぉ……」





朱翔の舌が私の口をぐちゃぐちゃに掻き回す。
私の口から涎が出てくる。





「っ……紗姫……可愛い…」





「がっ、こう……に、行かないとっ……」




息が苦しくなる。あまりに荒々しいから。

私の膝がガクッと曲がり、朱翔に倒れ込んだ。
その時に、プツンと透明の糸が私達の間で切れた。





「ッ……行ってきます。」





「あっ…紫月……」





バタンと玄関の扉が閉まった。