あまごい


 そうしてやってきた約束の日。私の携帯には園ちゃんからも伊勢谷くんからも連絡はない。しかも外は雨。私と伊勢谷くんが出会ったあの日のような土砂降りだ。

 そうか。伊勢谷くんはいまから、この雨の中で園ちゃんと会う。たぶん2人は付き合うのだろう。伊勢谷君の気持ちは知らないけれど、園ちゃんに告白されて断らない人はいないと思うもの。そんなハッピーエンドで、私はただの邪魔者だ。……いや、2人をつなぎ合わせたんだから恋のキューピッドなのかな? もしかして。

 役にたてたとしたなら、それでいい。私は満足だ。

 そう、思うのに。いくらお母さんの私を呼ぶ声が聞こえてきたとしても、起き上がれない。体が、重たかった。鉛みたいに。なんでかはよくわからないけれど、もう動きたくなかった。