本当は私に選択権なんてない。
だって、園ちゃんを見捨てることなんてできる? この不確かで自分でもよくわからない気持ちに名前を付けて、伝えることができる?
いや、できない。私にはそんなこと、できやしない。
園ちゃんのあのモデルのような長身に、柔らかな栗色の髪。ぷくりとした唇。ぱっちりと開いた瞳。
どれを取っても勝てる気がしないし、勝とうとも思わない。
……伊勢谷くんの隣に、ぴったりだ。
「はぁ」
そう大きなため息を吐きながら電車を待つ。
帰り道、駅のホーム。地面を打ち付ける雨が跳ね返ってきて鬱陶しい。そんな私の隣には梓も、ましてや園ちゃんもいなかった。
1人になりたかった。どうせなら伊勢谷くんとの待ち合わせもすっぽかして。
でも、そんなことできなかった。だから私はいまここにいるのだろうし、こうして、伊勢谷くんが指定した号車に乗り込んでいるのだと思う。
電車の中は、すかすかだった。私は乗り込んだドアすぐのところの、角の席に腰を下ろす。
海南高校の最寄り駅までは20分弱。それが憂鬱で仕方なかった。

