*
「で、なんでそんな上機嫌なわけ?」
私が上機嫌だから逆に、なのか、梓は火星の気温よりも寒々とした視線を送ってきていた。
「なんで、って、ねぇ?」
「わかってるわよ、どうせ伊勢谷絡みでしょ」
なにも言わずとも出てきたその名前に、思わず目を丸くする。
「よくわかったね」
「彩月、アンタ、自分で思ってるよりもずっとわかりやすいタイプだからね?」
うっと、なにも言えなくなる。梓のそんな台詞は、私の言葉を詰まらせるのに十分だった。
「で、なに?」
「うん、あのね。伊勢谷くんがね、」
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