「うん。でもこの分じゃ今日も部活オフだなあ」

 激しすぎる雨のせいで窓の外の景色が霞んで見える。これ、大雨洪水警報が出ていてもおかしくないんじゃないかな。

 「そっか。テニスコート、屋外なの?」
 「そー、屋外」

 ふわぁと、伊勢谷くんは大きなあくびをする。テスト勉強であまり寝ていないのか、うっすらクマができていた。

 「屋内コート作ってくれればいいのにね」
 「私立と違って公立は金ないんだよ。しかも活躍しない部活にかける金はなおのこと、ないわけ」
 「なるほど」

 確かに盟女には屋内コートがある。というか、私立で屋内コートがないところは珍しいんじゃないかな、たぶん。

 でも公立となれば話は別だ。公立に行った友達のところは屋外コートすら、ないらしいし。だから海南に屋内コートがないことも、珍しいことじゃなかった。