「あ、もうそろそろだね」

 はっとした。

 もう園ちゃんの最寄り駅を出発するところだった。時間が、なかった。

 「あ、の!」

 なんでだろう。何がそうさせたんだろう。意気地無しで弱虫で、聞く勇気なんてなかったのに、

 「名前、教えてください」

 ああ、いま。
 やっと、聞いた。

 「え?」
 「えっと、私、宮辺彩月です」

 言っちゃえばなんとかなるもんだ。きっとこの後に激しく恥ずかしくなるんだろうけど、もう、いいやと思った。

 目の前の彼は戸惑ったような表情をしてから、口を開いた。