「だけど、何? 奴も聞いてこなかったって? そんなん関係ないわよ。問題は彩月が知りたいかどうか、聞くかどうか、でしょ?」
「そうだけど、」
今更聞くのも恥ずかしい。
そんなバカみたいな羞恥心が私の足枷になっている。それが、とてつもなく重い。
「まあ、私は別に関係ないからさ。全部、彩月自身だからね?」
決めるのは。
最後に付け足したその言葉は、ひどく優しかった。
「……うん、聞くよ。自分のためだもん」
その言葉を自分に言い聞かせて。頭の中を、ぐるぐると回らせた。
窓からは眩しい陽の光が注ぎ込まれる。空は雲ひとつないほどの晴天。降水確率も10パーセントほど。たぶん雨は、降らない。
今朝はあんなに雨の日が待ち遠しかったはずなのに今はむしろ、雨が降りそうにないことが嬉しい。
自分のため。聞きたい。そうは思ってもやはり、踏ん切りはつかない。
だから今日ばっかりは、雨でなくてよかったと、思ってしまった。

