「でもウチの部活、雨降ったり降りそうだったらすぐ練習なくなんだ」

 にかっと笑った彼。

 部活を知れたのは嬉しいけれど、それ以上に知りたいことは聞けない。いまさら? って感じだし。タイミングが、つかめない。

 と、落ち込んでいたものの、聞こえていた彼の言葉を反芻させてやっと飲み込んだ。

 「もしかして、雨の日に会えるのって」
 「ああ。部活ないからね。そん時は大体あの時間だよ」

 わぁ……!

 私の表情が一気に晴れる。自分でも単純、と思ったけれど季節は梅雨。雨の降る確率は高い。

 「じゃ、もう着くから」
 「うん、じゃあね」

 電車から降りる彼の後ろ姿を見つめる。

 そっか、雨の日、かぁ。

 なんて雨の日が待ち遠しくなる一方で、名前を聞くことができなかったことへの嫌悪感が募る。

 空はまだ、青かった。