ドアが閉まって次の駅に向かい出した頃、彼は口を開く。

 「俺、次の駅だから」

 沈黙が始まってからずっと、上げられなかった顔を上げて、彼を見る。彼の襟元には校章が光っていた。

 「じゃ、」

 そして電車は、駅に着いた。

 「またね」

 彼の口角が上がる。目尻が下がる。

 目の前のドアは、開かれた。私はそれと同時に急いで言葉を紡ぐ。

 「あ、はい! またっ!」

 彼は一瞬驚いた顔を見せてからまた、顔を緩ませる。そして彼は電車から降りた。その襟元には「海南」と書かれた校章。

 海南、高校なんだ……!

 やがてドアが閉まって彼の姿が小さくなっていく。私は梓に会いたくてうずうずしながら、電車に揺られていた。