私はため息でもつきたくなったのに、電話の向こうでは梓が楽しげに笑っているから、頬を膨らませた。

 「梓も明日、早く行く?」
 「はぁ? 行くわけないじゃん」

 電話だから表情はわからない。だけど、なんとなく呆れた顔をしている気がした。

 だけどめげない。だって朝早くから教室で一人とか、寂しいもん!

 「行こうよー。ねっ? ねっ?」
 「はぁぁ?」

 嫌そうな声が聞こえる。でも、少しだけ梓の心が揺らいでいる気がした。

 「ねー、お願い!」
 「えー……」

 あと一押しだ!

 と、私はない頭を働かせて、最高の落とし文句を用意する。