次会ったときは、絶対に返そう。うん、そうしよう。
そう決意して私は梓の声に集中する。話題はちょうど学校のことのようだった。
「あ、そういえば、」
梓はタイミングよく話を転換させようとする。私は「うん?」という声を出して、言葉を促した。
「明日、彩月日直じゃない?」
「……えっ。えぇ!? やだぁっ!」
情けない声が部屋に響く。そうでなくても泣きたい気分だったのに、反響した声が耳に入ってきて、一層気持ちが沈む。
「ははっ。どんまい! あ、ってことは、明日朝、早く学校行かなくちゃね?」
……そうだ。日直は面倒くさいことに、教室の施錠をしなければならない。だから必然的に、学校に早く行かねばならなくなる。

