「はぁ……」

 私は紺色の折り畳み傘を見ながら、ため息をついた。結局使ってしまったこれは、しっかり乾かして丁寧に畳んで。いまだに、私の手元にある。

 これ、どうしよう。

 実はこの傘、ここ数日間鞄に忍ばせておいてあった。名前も知らない人から借りたそれは、異様な存在感を示している。

 もしかしたらこれ、要らないかもしれないけど。

 安物だとか、遠慮するなとか。初対面の私にそんなことを言いながらこの傘を渡してきた彼は、よほどのお人好しか、この傘が要らなかったのか。

 返したい気持ちはもちろんあるんだけど……かさ張るしなあ。

 私はその傘を手にとって鞄にいれるかどうか迷ってから、罪悪感を感じながら机の上に置いた。