「いいよ、別に。だから返さなくていいって、言ったじゃん」

 頭上から聞こえる声に意識を集中させる。この狭い空間だからか声が良く通って心地良い。

 「で、でもっ」

 私は結局何がしたいんだろう。自分のことなのに、自分のことじゃないみたいだ。

 「だから、いーって。あれ、プレゼントってことで」

 そう言われると私はもう何も言い返すことができない。そもそも、何を言えば良いのかわからない。

 私が黙り込んだからか、また沈黙が始まる。それが気まずくて、私はずっと自分のローファーを眺めながら歩いていた。

 いつもならそうかからないはずの帰路が、どうにも長く感じる。だけど早く離れたいと思う気持ちと、それとは真逆の気持ちはまさに紙一重だった。