だけど、と気を落ち着かせようと一生懸命になる。ここで彼が断ってくれればなんとかなる。たぶん。
私はちらりと彼を見た。彼は外を見ながらため息をつく。そして、
「すんません。お願いします」
だ、なんて、言ってのけた。
うっそぉ。嘘だぁ? え、なに。いまから「相合い傘」?
ぽかんと、口を開けたまま私は彼を見ていた。彼は困ったように笑って、少し視線をそらしてから口を開く。
「いや、やっぱ大丈夫です」
「い、いえ! どうぞ!」
私は勢い良く傘を開くと、彼に笑顔を向けた。今度は彼が口をぽかんと開ける番だった。
ああ、私、何やってんだろ。
頭の中は半分冷静で半分パニック。体は間違いなく全部混乱状態。そんな状況で上手く噛み合うわけがなくて、もう私の意志がどこにあるのか、まったくわからない。

