あまごい


 私の視界に入ってきたのは焦げ茶色の髪、長身の男。彼は構内と外とのちょうど境目のところに立っていた。

 い、いたぁ!!

 早くしないと彼が行ってしまう気がして、勢い良く走り出す。そして私は彼のところまで行くと、袖を少しだけ掴んだ。

 「あ、あのっ!」

 彼はゆっくりとこちらを向く。もし人違いだったらどうしようかと思ったけれど、人違いではないようだった。

 「えっ?」

 彼の瞳に私の姿が映る。すると途端に正気になって、私はすばやく袖から手を離した。

 ど、どうしよう。呼び止めちゃった。

 恥ずかしくて顔が上げられず、彼がどんな表情で私のことを見ているのかわからなかった。